無意味のような生き方

組込みエンジニアが怒りと無念をさえずるブログ。

大丈夫だよ

「言葉にしなきゃ伝わらない」というのは何が発祥の言葉なんだろうか。検索してみても、そのものズバリのワードは引っかからない。ただ、関連ワードに「歌詞」と出てきたので、有名な曲の1フレーズなのかもしれないと思って調べてみる。探求の結果、以下の曲がヒットした。

 

『embrace』/BUMP OF CHICKEN
『伝えたいこと』/阿部真央
『Ray』/Kotoba no Chikara
『キミに贈る歌』/菅原紗由理
『Real me』/浜崎あゆみ

 

著名なミュージシャンの曲もあるけれど、どれも大ヒット曲という訳ではなく、言葉の発信源ではなさそう。すでにこれらの曲が出た頃には、「言葉にしなきゃ伝わらない」は共感を得られる1フレーズとして定着していたのではないかと思う。


出元がわからない名言はこわい。特定の時間に特定の人(人たち)が意図的に流行らそうとして生み出した可能性を感じる。コミュニケーション力不足を嘆くことで金を稼ぐ勢力が、自分たちのビジネスに引き寄せるために流行らせた煽り文句のひとつのような気もしてくる。「暗く」「口下手」なイメージがあるだけで何とも呼ばれていなかった人たちを「コミュ障」と名付けておいて、セミナーを開き啓発書を売りつけて「治る」のだと訴える。いや、それまで問題とも思ってなかったんだけど...。
前日に自分が重ねた雪を翌日に自分で雪かきして儲けていたこち亀の話を思い出す。

 

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嫌いな名言は、ひっくり返して微修正すれば、好きになることが多い。「自分が変われば相手も変わる」という名言は嫌いだが、「自分が変わっても相手は変わらない」という言葉は好き。「考えるな、感じろ。」という名言は嫌いだが、「感じるな、考えろ。」という言葉は好き。「サクサク」という擬音は嫌いだが、「ヌルヌル」という言葉は好き。

 

「言葉にしなきゃ伝わらない」よりも「言葉にせずに伝えたい。」
日々生きていて、言葉にするまでもない事がたくさんある。初対面で挨拶も交わしたことのない相手に対して、言葉をかけるハードルは異様に高い。ハプニング系(「スマホ落としましたよ」)とか、感謝・謝罪系(「すみません」)とか、人によるけどナンパ系とか、何種類かの状況のパターンと定型文があり、それ以外で話すことは禁じられている気がする。そのため、言葉にせずに伝えなければ行けない状況は頻発している。

 

毎日、電車に乗って通勤している。僕が乗る駅では、車内は割と混んでいるので、出口のドア付近に立っていることが多い。次の駅が乗り換えの激しいターミナル駅なのだが、到着のアナウンスが流れると、皆すこしずつ出口につめ出す。僕はこれでもかというくらい出口すれすれに立っているにもかかわらず、3日に1度はギューと扉に押しつけられる。まだ着いてもいないのに。彼らに伝えたい。「大丈夫だよ、僕も降りるから」と。もっと言えば、もし次で降りないならば出口付近に立つようなことはしない人間であることを伝えたい。
なんとか伝える方法はないものか。アナウンスが流れた後、路線図を確認していかにも降りる雰囲気を出しているのだが、彼らには絶対に届いていないと思う。

 

よく行くコンビニのレジもそうだ。「袋はいりません」と言うと、レジの精算の時間とこちらのお金を出す時間が狂ってしまい、いつも圧倒的にレジが早く終ってしまう。確かに袋はいらないと言ったけれど、それは袋を入れる時間も惜しむほど急いでいるわけではなくて、単にすぐに食べるからいらないだけなんですよ、と伝えたい。そんなに急がなくて大丈夫。商品を鞄の中に入れて、財布を出して、しかもSuicaで払わないから。いつも400円くらいしかいつもチャージしてないから。後ろの人から圧を感じるので、むしろテキパキ精算しないでくれと伝える方法はないものか。大丈夫だよ。大丈夫なんだよ。