無意味のような生き方

組込みエンジニアが怒りと無念をさえずるブログ。

あの日のオシロスコープ

去年の冬、仕事で作ったプログラムにバグが見つかった。ある動作中にコマンドを送ると、やるべき処理が全く動かなくなる。原因が特定できず、その場にいる全員がパニックになった。そのバグに一番関わったチームの中の、一番関わったメンバーである僕も、例に漏れず、大慌てだった。持ち前の危機回避能力「他責」によって、自己否定の矛先を反らすことには成功したものの、仕事ではじめての大きなミスだったので、やってしまった感は頭から離れなかった。

 

原因を解明するため、オシロスコープ*1で波形を計測した。本来、3つ以上の処理が同時に動いているはずが、1つの処理が行われている間、他の処理が割り込めずに停止していた。

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オシロスコープ

これが結構まずい問題で、すぐに緊急会議となった。色々と話し会って、その日は帰った。それから10時過ぎに退社する日が2週間続き、最終的になんとか問題を解決することができた。

 

一生懸命バグに対処していた、どこかの日の帰り道に思ったこと。普通の人は、趣味があって、大事な家族や友人がいて、他の楽しいことや苦しいことが沢山ある中で、仕事をしている。人生というプログラムを、複数のタスクで同時実行させながら動かしている。まさに、僕が作りたかったプログラムだ。だが、僕は違う。僕には、熱中している趣味もないし、恋人もいない。家族はいるけど大事にしていない。友人は少しいるが、連絡するのも億劫だと考えてしまう。一日中、仕事と仕事関連の作業だけをやっており、仕事以外のタスクが起床していない状態だ。あの日のオシロスコープはわいなんや。でも、仕事しか自分を支えるものがないと、仕事で肯定されない時、きついなあ。

 

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*1:電圧の変化を波形として見ることができる機械