無意味のような生き方

組込みエンジニアが怒りと無念をさえずるブログ。

敦煌

敦煌』という小説を読んだ。読んだきっかけは、シルクロードに興味があったから。大学時代、敦煌の講義を(なぜか)受けて、えらく感動した。その講義は落ちたような気もする。身の保証など全くないのに、ただ商売をするために国を超えて何万kmも歩く人達。言葉が不適切かもしれないが、すごく一途に思える。一人一人の人生もあったのだろうが、今の視点では、より世界史とか文化史を生きているように感じる。RPGに登場するキャラのように、全員が明確な役割をもっていて羨ましい。

 

 

敦煌に行きたくなったらいいなーという気持ちで読み始めたが、今敦煌に行きたいかと言われると、そうでもない。安全で金があるなら行きたいけど、行って何かをしたいわけではない。旅行に行く人の動機って何だろう。何かを見ることであれば、写真や動画で十分見ることができる。自分の経験上、観光地に行ってパンフレット以上の景色が見れたことは一度ない。写真より肉眼にこだわる理由も特にない。何かをすることであれば現地に行かなきゃならないが、日本で体験できないことってあまりない気がする。個人的にどうしてもやりたいことがない。いや、そもそも、「したことがない=今までしなくても生きてこれた」わけだから、必然的にどうしてもやらきゃならないものではないはずなのだ。そう考えると、むしろ行きたくなってくる。このくらいの気持ちでも行っていいんだと思う。

 

 

小説『敦煌』の感想。完全に自分のせいだけど、途中で登場人物を見失ったせいで、内容を完全には把握できなかった。超重要な登場人物が4人いて、そのうちの2人を同一人物だと思っていたせいで後半わけが分からなくなった。武闘派でバイリンガルで名家出身の僧侶が実は2人だったというのが一番驚きだった。それと、敦煌という地名が本文で全く使われていないのが切ない。本の中では「沙州(敦煌)」とたまに書かれているくらいで、会話では一切出てこない。歴史物あるあるだけど、現代で有名な名前が当時は使われていないことが多い。真田丸でも誰も幸村って呼ばない現象。

 

普段、歴史小説をほとんど読まないので、主人公の心情がすごく分かりづらいのが新鮮に感じた。主人公は知識人だが、生への執着が乏しく、生きる意味とかをいちいち考えない。途中で危険な出来事が色々と巻き起こるが、主人公の態度は最後まで変わらなかった。どうなってもいい(興味がない)という態度で、めちゃくちゃ弱いのに前線の兵士に自ら志願したりする。命の価値が薄いというか、自分のことを重く考えていない雰囲気が読んでいて爽やかで心地いい。

 

仏像の中に巻物を埋めるスケール感と、後に発見されるときのカタルシスのやばさ。映像にするといいのはわかる。

 

敦煌 (新潮文庫)

敦煌 (新潮文庫)