【2019国際ロボット展】建設生産・管理システムにおけるAI・ロボットの活用レポート
はじめに
12/18~21日に東京ビッグサイトで開催された「国際ロボット展」に行ってきました。
僕は19日に開催された「建設生産・管理システムにおけるAI・ロボットの活用」というセミナーに出席しました。せっかくなのでレポートと感想を書きます。
セミナーの様子
朝の10時30分から西4ホールというキャパ500人くらいの会場で行われました。出席者は約250人くらい?年齢層は比較的高めで、スーツの方が多かったのが印象的でした。ゆるめのセミナーとは違って、講演中にスマホをいじる人はほぼいないのが新鮮でした。
講演1:建設生産・管理システムにおけるAI・ロボットの活用
発表者は国土交通省の渡邉さん。
テーマはタイトルどおり、建設業界におけるAI・ロボットの導入の話。
国目線でなぜロボットの導入が必要なのか、国が何を目指しているのかというお話が聞けて貴重でした。
- 国土交通省が発表している点検要領の内容が刷新された。
「(建物の)状態の把握は近接目視により行うこと」
→
「近接目視により把握するか、または、自らの近接目視によるときと同等の健全性の診断を行うことができる情報が得られると判断した方法により把握すること」
要はロボットによる点検が認められた!
- 2018年時点で3割の建物が築50年以上。あと5年で建物の半分近くがが50才以上になる。
- インフラロボット導入を推進するのは5つの分野。
(1) 橋梁
(2)トンネル
(3)ダム
(4)災害状況調査
(5)災害応急復旧
- ロボット検知の段階
Lv1. 損傷箇所を点検する
Lv.2 損傷の種類を分類する
Lv.3 点検要領に基づく損傷エリアのレベルづけを行う。
Lv.4 Lv.1~3をどんな角度からでも判断できるようになる。
現状できているのはLv2まで。Lv4までできるようになってほしい。
- ムーンショット型。国が目指すべき未来像を提示することが大事だと考えている。2040年には建設工事の完全自動化を目指す。
講演2:インフラ点検へのロボット導入推進について(点検AIの可能性)
発表者は土木研究所の新田さん。
こちらは開発側目線から、現状のロボット点検の何が問題で、どこに希望があるかを分かりやすく説明してくれてとても勉強になりました。
- ロボット点検の必要性
点検にはめちゃくちゃお金がかかる。
例)足場がない橋を点検する場合。機材のレンタル費だけで1日20万かかる。さらに近くの道路を通行止めにしたりと影響は莫大。
建設業の労働者の1/3が55歳以上。これから労働力は不足していく。
- ロボット点検の問題点
点検の際、損傷箇所を写真に収める必要があるが、人とロボットでは状況がことなる。
人⇒撮影枚数は(1つの建物につき)約100枚程度。損傷箇所だけだけ撮影し、傷が見やすい角度を考えるため、後で確認するのがが容易。
ロボット⇒撮影枚数は約10万枚。損傷箇所以外も撮影する上、見やすさを考慮せず傷も判別しにくい。
ロボットの精度としては、傷が3mm以上であれば、人が点検した場合の80%は検出できるレベル。1mm以下になると検出率は50%程度になる。これを多いと捉えるか少ないと捉えるか。
- 点検ロボットの可能性
10万枚の撮影を強みにする。SfM(Structure from Motion)*1という技術を使えば、撮影した写真からPC上に実際の建物のモデルを表示し、カーソルだけで点検できるようになる。この技術を使えば、点検と補修の工程を分ける必要がなくなる。モデルを見てあらかじめ損傷をピックアップしておけば、現地で点検しつつ補修を行えばばよい。
- 性能評価
これからのロボット点検の指標は、人との比較ではなくベンチマーク評価とするべき。また、計画、整理、点検、報告書作成の自動化率を出し、性能を測れるようにするべき。
感想
どちらも非常に丁寧で分かりやすく、素晴らしい発見のある講演でした。
点検ロボットって便利で楽だなくらいに思っていたのですが、人命に関わるため導入が非常にナイーブで、技術的にも難しく全自動になるまでいくつも乗り越えるべき壁があることを痛感しました。現状のロボット導入は思ったより少なく(1割程度)、まだまだ参入の余地があるのでやりがいがありそうです。
*1:対象を撮影した複数枚の写真から、対象の形状を復元する技術。http://mogist.kkc.co.jp/word/3c541ad3-87ea-4b71-8eee-8f7b7224d2a6.html