無意味のような生き方

組込みエンジニアが怒りと無念をさえずるブログ。

火災報知器がやまない夜に

先週の金曜日、体中を貫く高音がマンション内に鳴り響いた。時間は深夜0時過ぎ。目覚まし時計が誤作動したのかと思ってあわてて止めようとしたが、明らかに部屋の外から音がしている。覗き穴を見てみると、タイトルにある通り、火災報知器が鳴っていることが原因であった。本来なら、すぐさま外に飛び出すのが正解だと思うのだが、僕はその時、まずベランダに直行し、窓から通行人の様子を伺っていた。火事が発生しているなら、こっちを見ている通行人がいるだろうと思ったのだ。誰も見ていないので、そんなにひどくはないのだろうと安心する。しかし、一向に鳴り止む気配がないので、結局パジャマのまま財布だけ持って外に出た。

 

マンションの外には、住人と思われる人物が5,6人ほどいた。マンションを一周廻って見たが、煙が立っている箇所はなかった。初めて会う住人たちと「なんですかねー」という会話をしつつ、その場からフェードしていると、1階に火災報知器を止める用のボタンを発見した。ぼーっと見ていると、住人と思われるおじさんがやってきて、ためらうことなくそのボタンを押した。鳴り響いていた火災報知器の音が止んだ。その時、僕の周りに3,4人ほど集まっていたが、なぜ落ち着き払ったおじさんがこんなボロアパートに住んでいるのだろう、という思いが全員の心に去来した。そのすぐ後、近くの飲食店の煙が原因だったことがわかり、おじさんに一礼の後、散り散りに帰宅した。

 

家に戻った僕は、『UNGO』というアニメの続きを再生した。物語が進み、1話のラストに差し掛かかった時、聞き覚えのある高音がマンション内に鳴り響いた。もう火事ではないことは確定しているので、家の中で様子を見ることにした。だが、5分経っても音が鳴り止まない。不安になった僕はまたしてもパジャマのまま外に出ようと思って靴を履いていると、ドアの前が騒がしくなっていることに気づいた。家の前の火災報知器の前に人が集まっている。あ、そうか。さっき階段を降りた時、慌てて自分の階の火災報知器を押していたのだった。家を出る勇気はなく、除き穴から様子を見守る。どうやら強く押してしまっているらしく、引っこ抜こうと苦戦しているようだ。任を果たしているのはやはりおじさんである。ドアを挟んで応援していると、どうやらうまく行ったらしく、おじさんたちは各々去っていった。ああなりたいのに、ああなりたくない。矛盾した感情を抱えて今に至る。

 

生活 特装完全版 (コミック) ([特装版コミック])

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10年たって彼らはまた何故ここにいるのか…―why

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